キャリアログインタビューシリーズ あのエンジニアのキャリアがしりたい!

Interview第4回

小芝流“やってみなはれ”の極意【後編】
解くべき課題の発見は新しい言語や技術習得の好機

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年齢36

事業CTO

2003年、大阪経済大学経営情報学部を卒業後、独立系SIerに入社。マイグレーションや基幹系業務システム開発等に携わる。2008年、知人の興したシステム開発会社に転職。仕事は充実していたが、より直接的に事業に携われる職場を求めて2010年にVOYAGE GROUP入社。2013年、イラストコミュニケーション・サービスで知られるピクシブに転職し、広告配信システムの開発や開発チームマネジメントを手掛ける一方、人材採用や育成など今までにない業務に従事してキャリアを伸ばす。2015年6月、アニメイトラボ最高技術責任者(CTO)に着任。現在に至る。

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市谷

自ら先陣を切って行動することで周囲を巻き込んでいく。それって結構大変なことですよね。

小芝

TEDの有名なスピーチ「社会運動はどうやって起こすか」を知っていますか。ある男性が上半身裸になって公園で踊り出すんです。周りは無反応だけど、2人目がフォロアーとなって一緒に踊り出すと反応が変わり始める。さらに3人目が加わると、次々とみんなが踊り出すんですよ。ぼくはその1人目になるか、チームのメンバーが1人目になったら、すぐに2人目になることを意識しています。昔は2人目どころか、3人目にさえならなかったけれど、いまは仕事であれ、会社行事であれ、声を出して動いていくことが大事だと思っています。

市谷

3人目にもならなかった人が1人目になるってすごい変化ですよね。なぜそれが出来るようになったんでしょう。

小芝

それは“オイシイ”から。この“オイシイ”は関西弁のニュアンスね。

市谷

なるほど (笑) 。

小芝

シリアスに言えば、先陣を切って行動しないと落ちこぼれてしまうと思っているからです。この社会では何かができるから、ご飯を食べられるわけですが、いまこの瞬間にも自分より技術の長けている人が出てきます。彼らと直接競争しなくとも、社会に対して自分なりのバリューを示す必要はあると思っています。
本来のぼくは引きこもり症で、週末はジムでトレーニングしたり、自転車をこいだり、1人で黙々と何かをして過ごします。そんなぼくが周囲を巻き込もうとしているのは、自分なりの危機感があるからです。正直に言って、ぼくの技術はスペシャルじゃないし、プログラミングも得意じゃない。テスト駆動開発は経験があるからレッド・グリーン・リファクタリングを回すことは出来る。セオリー通りに動くことができるという意味で、どうにか二流かなと思っています。やっぱり、才能あるエンジニアには勝てないですよ。それってすごく怖いこと。いまの立場はバブルなんじゃないかとさえ思いますね。

市谷

めちゃめちゃ謙虚じゃないっすか。

小芝

怖いと思うからこそ、恐怖で縮こまると潰されると思うからこそ、打って出るんです。先陣を切れば、転んでもオイシイ。経験値が上がるし、失敗してもそこから学べる。これまで何度も転職して、その都度、成功も失敗も積み重ねてきました。最近では採用や育成の分野で自分なりの経験を積めたと思っています。自分の年齢も考えると、これからは不得意を得意にするよりも、得意なことをもっと伸ばしたいですね。

市谷

先ほど、これからはもう少し手を動かしたいと言っていましたよね。それと、今のお話はどう関わるのでしょうか。

小芝

立ち上げ当初は採用活動が先決だったけれど、うまく回り始めたことで、少しボトルネックが変わってきました。いまは、メンバーにユーザー価値を高めることに専念してもらいたいと思っています。ぼくは彼らの仕事を見守りながら、彼らの仕事の妨げになる石ころを取り除きたい。改善すべきは職場環境かもしれないし、コミュニケーションかもしれない。何かのツールを導入すれば解決することかもしれない。まずはできるところからやっていこうと思っています。そのとき、ぼくが手を動かす方が良い技術的な課題があるなら、喜んで手を動かします。100人規模の会社なら出来なくても、まだ十数人ですから、もう少し自分が手を動かしてもいいのかなと思っています。

市谷

そうか、手を動かすというと、何か特別な技術に挑戦することかと思ったんだけど、チームのボトルネックを取り除くことなんですね。

小芝

どちらの意味もあるけれど、いまは後者の方が大きいですね。手を動かすのは1日の中のどこでもいいんです。極論すると、仕事じゃなくてもいいかもしれない。技術はやっぱり楽しいですから。自分がやったことに対して反応が返ってくるし、思うように動かせたら嬉しい。デバックの苦しさも、それを解いたときのカタルシスも、どちらも大好きです。ただし、自分が手を動かすときに大事なことは“課題”なんですよね。

市谷

その課題駆動についてさらに詳しく。

小芝

新しいプログラミング言語を覚えたいからと、次々勉強する人がいますよね。それは素晴らしいことなんだけど、ぼくの場合は問題意識がないと覚える気になれないんです。まずは「これを実現したい」というテーマや解決したい課題があって、それを実現できるのが新しいプログラミング言語ならばそれを覚えるし、ほかの解決手段があればそれを勉強します。でも、昔から「この言語を覚えたいから勉強する」とは思えなかった。例題を出されてチュートリアルを解きましょうと言われても、全然そういう気になれないんですよ。

市谷

勉強が好きなのではなく、課題解決が好きなんだ、と。解決に値する問題があって、それをどうやって実現するか、それが学びのモチベーションなのだと。例えば最近で言うと、機械学習なんかはどうですか。挑戦したこととはありますか。

小芝

いますぐに機械学習を必要とする状況にはなっていませんが、いずれ必要になるでしょうし、もう少し成熟したら使うことになるんじゃないかな。新しい言語や技術を覚えるにはそれなりの素養が必要ですが、ぼくにはすべてを理解して活用する力が足りないと思っています。いままでも流行りだから技術に飛びつくことはしなかったし、これからもしないでしょうね。

市谷

課題発見は仕事の上でも重要だと思いますが、小芝さんは解くべき課題はどうやって見つけていますか?

小芝

本当に正しいか、良い意味で疑ってみること。スムーズに動いているときこそ、そこに疑問をさしはさめたら課題を見つけられます。もちろん、毎日重箱の隅をつつくような疑い方をしていたら、嫌な奴ですよ(笑)。でも、意識して「本当にこれでいいんだっけ?」と考えるようにするといいですね。ぼくは仕事とプライベートを分断しない性質なので、一日中考え続けることも、技術漬けの日々も楽しんでやってこられました。その意味では得したなあと思っています。

市谷

これまでにたくさんの学びの機会があったと思います。なかでも印象深いものを教えてください。

小芝

書籍『ザ・ゴール』は読んでよかった一冊です。制約理論やボトルネックのチューニングなどはいま抱えている課題と合っているし、自分のなかのインフラ層にどーんと重く存在していると感じます。あらゆる場面で応用が利くし、いろいろなところで恩恵を受けているし、多くの書籍で参照されているのもそういうことなんじゃないかな。最近はKindle版やコミック版もあって便利になりました。書籍は読み返したり、「あの一節!」と思った場所を探したりするのが大変だけど、コミック版は振り返りも簡単でおすすめです。

市谷

小芝さんならRubyを学んだこととか、開発技術の話になるかなと思ったんだけど、そうきましたか。
でも小芝さんらしいです。確かに『ザ・ゴール』は名著ですね。

小芝

ぼくはたくさんの本を読むタイプではないですが、読んだ本は一冊一冊が糧になっていて思い出深いです。たとえば、オブジェクト指向の書籍は新入社員になった4月に大阪梅田の紀伊国屋で買ったんですよね。その当時は書籍の著者って雲の上の人だと思っていましたが、ふとしたご縁で知り合うことができて、同じ番組にも出させてもらいました。つながりってすごいなあと思いましたね。

市谷

新卒のときに買った書籍の著者に会えたら感慨深いでしょうね。
それだけキャリアを積んでこられたということだと思いますが、振り返ってみて、自分にとって転換点だった出来事はありますか?

小芝

2社目の会社で客先常駐の仕事をしていたときが、一番成長の度合いが上がった気がします。実はそのころ、最初に勤めた会社が粉飾決済で摘発され、メディアで騒がれていたんです。頭を下げる社長の姿を見て暗い気持ちになったりしてね。でも、ふと思いました。例えば自分がプロジェクトの中で進捗を報告するときに、少々ヤバイと思っても「大丈夫です」と答えてしまうことはあったけど、この積み重ねが粉飾になるんじゃないかって。取引先に対して自分が果たすべき役割は何なのか、何を言わなければならないのか、どういう振る舞いをすべきか、考えさせられました。そんなことを思いながら、客先常駐の現場を見ていると、結構いるんですよ。客先の担当者を上司と勘違いしている人。

市谷

ああ、なるほど。

小芝

常駐先の相手は雇い主でも上司でもない、顧客ですから、「何をしたらいいですか?」と質問するのではなく、「次はこれですね」と提案して課題解決にもっていかないといけません。ぼくらの仕事は顧客の課題を解決することであって、相手の命令に服従することではないんです。このころにセルフマネジメントの大事さに気づいたんですよね。当時のぼくは顧客に対等に認めてもらい、専門家として遇されるように気を張っていた。1人常駐も多くて、自分がここで全力を尽くして結果を出さなければ仕事が続かないという危機感があったんです。最近はあまり聞かない言葉だけど、当時は“自社待機”だけは絶対に避けたいと思っていました。

市谷

迷ったり悩んだりしながら歩んできた結果がいまの小芝さんなんですね。そんな小芝さんから、何を学び、どう生きていけばいいのかを迷っている読者の方々に是非アドバイスをお願いします!

小芝

「やってみなはれ」かな。これはサントリー創業者の鳥井信治郎さんの言葉です。恐怖心で縮こまっても潰されるだけですから、外に出ていく方がいい。ブログでもいいので、自分のなかから外に出す。届けてみる。コードを書くのもいいでしょう。とにかく発信をする。それに対して反応があったら何かつながるもしれませんが、反応はない方が普通です。進路に迷うような人なら慎重だろうし、そう簡単には炎上なんてしませんよ。もしも失敗したら、むしろオイシイ。失敗したところで、ちょっと恥ずかしい思いをするだけで、次に誰かと会った時のネタになるんです。迷って悩んで鬱屈しても何も始まりません。やってみなはれ、です!

市谷

ありがとうございました。

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